ガサツなわたしが女性として成長できたのは藤があったから
2007年にCDデビューを果たしたジャズピアニストの外山安樹子さん
彼女は、音楽の世界だけを駆け上がってきたのではなく
様々な経験を経て、プロのピアニストの道を選びました。
そんな彼女の中高時代はどのようなものだったのでしょうか...
藤への入学は誰が決めたんですか?
記憶が定かではないのですが、たぶん自分が言いだしたんじゃないですかねぇ。 音楽に優遇があって、当時は道外の音楽系の高校にいくときだけ、やめなくていい制度があったんですよね。そのころはまだ音大に行こうと思っていたので、それもあったのかもしれません。
ピアノの先輩にも藤の出身者が多くて周りの方にも「藤はいいわよ」と聞いたり。あと、高校受験って、高校あって次大学で、3年で受験じゃないですか。なんかバタバタしそうだなって思って。
6年間ゆったり過ごせるのは魅力だなって。それもあって、自分で受験したいなと考えたんだと思います。
入って、どんな感じでした?
やっぱり、厳しかったですよね(服装などの校則が)。すごく。
今より厳しい時代ですね。
厳しい時代だったようですねぇ。なんでも黒でしたからね。
目に見えるもの、とにかく黒。ゴム、茶色にしてて怒られましたからね。
茶色で怒られるのか~みたいな(笑)厳しかったけど、でも、楽しかったですね。
どんな学生生活でしたか?
私、休みがちな子だったんですよ。喘息持ちだったりすごく身体弱くて。いまでは「へっ?」って言われるんですけど(笑)。だけどなんていうか、すごく温かく見守ってくれてましたね、周りの先生とか。まあ、「困ったな」とか思いながら、「この子だったらきっと出てくるでしょう」みたいに、信頼してもらえたから、そんなに自分でストレスじゃなかった。気になるじゃないですか、休んでばかりいると、心配されるかな、とか、迷惑かけるかなって。それから周りの友達も楽しい子が多くって。個性的な子が多かったですね。
藤で一番思い出に残っていることは?
カトリック独特の行事ってあるじゃないですか。待降節とか。そういうのが、すごく楽しかったんです。ただクリスマスを待つだけじゃなくて、一週間ずつろうそくに火を付けてくとか。あと、御聖堂でオルガンを弾かせてもらったりした時もあるし…。
パイプオルガンですね。
そう。カトリックでしか体験できないことが、当時すごく楽しかったって記憶があります。
ピアノが弾けるということは、合唱コンクールでは…。
ずっとピアノでしたね。練習も、ろくにでられず、「すいません!」っていいながら(笑)。なるべくでるようにはしましたけど。
最後の6年生のとき、今は藤の理科の先生をやっている同級生の山城さんが指揮でわたしが伴奏をしたこともありました。
全体合唱のハレルヤですね。
そうそう。
それから、体育の先生たちが作った「藤体操」というオリジナルの準備体操があって・・・今もありますか?
もちろん、あります。
最初は笛のピッピッという音に合わせてやっていたんですがこれに曲をつけてほしい、って言われまして・・・(笑)私がピアノを弾いて録音して体育祭でも使ってもらったりしたのですが、「なにこれ~変な曲ついてんだけど~」みたいな雰囲気でみんな爆笑してて、いても立ってもいられず「やっぱりこれ使うのやめてください」って体育の先生に頼んだりしました。今思い返したら、使ってもらっておけばよかったかな(笑)
カトリック以外でなにか「藤しかないな」と思うことはありますか?
ひとつ言われるのが、「字がきれいだね」とか、丁寧さですね。わたしすごくガサツだったんですけど、キリスト教倫理の時間かなぁ、いろいろ女の子としての教育を、そこで受けた感じですね(笑)
ペン字の宿題が出た時があって、それまで字が汚いと言われ続けてたのですが、そこから、ペン字に目覚めて。それから瞑目とかするじゃないですか。そういう心を落ち着かせるすべを学ぶみたいなのは、やっぱりそこでしか受けられなかったのかなって。
女子校だね、と言われることは?
あ~、なかったかな。でも、女子しかいないという環境で自然と身に着けた自立心があるというか、リーダーシップをとれるというか、そういう時、あるかもしれません。
自分が成長したな、と思うことは。
女子としてのおしとやかさとか、まったくもってなかったので、6年間で礼儀作法とか学んだな、と思います。
学校でなかなか教えてくれないじゃないですか。社会にでたときの礼儀って。実際社会に出てみると、見た目で判断されることって多いと思うから、やっぱりきっちりしてなきゃいけないってことは、学んだ気がします。
今日も素敵です。
いやいや(照)。実は今日も「学校のHPにのる」って、どんな格好が適切なの?!とかすごく考えちゃいました。TPOに合わせて考える、というのは、そういう教育の影響かもしれませんね。
自分もしてもらって、これからも大事にしてもらいたいことはありますか?
う~ん。そうですね。先生方に本当に感謝してます。自分で、たとえば成績が悪くて落ち込んでたとしても、「あなたは多分すごく想像力があるから、クリエイティブな才能があると思うから、そっちのほうをいかして頑張れば」とか、すごく、いいところを言ってくれて、あんまりガミガミ言われた記憶がないんですよね。成績も上下したりしてたんですけど(笑)。自分がやる気になって自主的に勉強してたって記憶しかなくて。いいところを見て、温かく見守ってくれた先生方たくさんいたなぁ、って。それはすごい感謝してます。
うち、金子みすゞみたいなところありますもんね。みんなちがって、みんないい。
そうそうそうそう(笑)。そうなんですよね。人は誰もが素晴らしくて、誰もがかけがえのない存在なんだ、っていう価値観の元で学べたことは今改めて誇りに思います。
※金子みすゞ=大正末期から昭和初期にかけ活躍した童謡詩人。
在校生に対してメッセージをお願いします。
6年間、学校の中でも色んなことを学べると思います。でも、10代の多感な時期だからこそ吸収できる、感じとれることってとても多いと今振り返っても思います。だから学校の中も外もいろいろ見て体験してほしいです、怖がらずに。それが、のちのち、いろんなところに生きてくんじゃないかと思うんで。
撮影場所:くう
撮影協力:山本 弘市(くうオーナー)
インタビュアー/新山 晃子
カメラ/中村 祐弘
編集/松永 大輔
デザイン/清水 麻美