1便1便、無事に送り届けるために
飛行機に乗ることが苦手な齋藤さん。
そんな彼女の就職先は、「航空系」でした。
ロードコントロール業務とは?
そして、日々の仕事のやりがいとは・・・?
どんなお仕事ですか?
飛行機を安全に飛ばすために、飛行機の重量や重心位置を法律で定められた規定値・規定範囲内におさめるロードコントロール(LC)業務というお仕事をしています。
具体的には、どんなことをしているんですか?
離陸時の許容重量が1便ごとに決まっていて、その値を超さないように搭載可能な貨物量を決定して貨物さんに伝えたり、お客さまの予約数をもとに最終的に来るであろうお客さまのトータルの人数やお手荷物の個数を見積もって、規定値を超えないように重量の管理を行っています。
さらに、お客さまの予約数や座席配置、貨物の重さや貨物室のスペースなどを考慮しながら、バランスを考えてお手荷物や貨物の搭載位置を決定し、搭載指示書というものを出します。この搭載指示書通りにお手荷物や貨物が搭載されるので、重心を管理する上で非常に重要なものです。重心が規定値内にどうしてもおさまらない場合は、バラストという重しを積んで重心を規定値内に持っていくことで重心位置の管理を行っています。こうした重量・重心管理をした上で、最終的な重量や重心位置のデータをCREW(パイロットの方)に送付するのも、わたしたちLCの仕事です。
大変そうです・・・!ただ積んで、載せているのではないんですね・・・。
そうなんです。飛行機によってもお客さまのお手荷物、動物、貨物などそれぞれ積み込む場所が違います。そのことを全て覚えておいて、バランスも考慮しながら搭載位置を考えています。
思っていた以上に、難しそうなお仕事です。希望した職種なんですか?
本当は、グランドスタッフの仕事がしたくて受けたんです。ところが、内定のお電話でロードコントロール業務をお願いしたいとのことでお話を頂きました。
グランドスタッフと、一緒の採用なんですね。
そうなんです。約400人弱が採用で、そのうちの20人弱が、今わたしが働いているオペレーション部門の配属です。
CAになりたいとは思わなかったんですか?
飛行機が苦手で・・・。
え~?!
旅行は好きなんですが、正直飛行機に乗るのが苦手なんです・・・。
飛行機が苦手でも、「航空系で働きたい」と?
飛行機自体は好きなので、関連したお仕事も面白そうと思ったんです。
オペレーション部門は、男性が多そうですが・・・?
女性が多いです。全体でも、8割くらい女性の職場なんです。わたしのオペレーションの同期は全員女性です。同期同士も和気あいあいとしていて、仲の良い同期もすごくテンポが似ていてとても気が合います。
仕事中、走り回ったりするんですか?
いえ、デスクワークです。一度に3つの画面に目を向けて作業をしています。
職場の雰囲気は?
良いです!先輩や同期と助け合いながら仕事ができています。
やめたいと思ったことは?
・・・正直特に最初のころはつらくてそういう思いもありました・・・。とにかく勉強で、覚えることも多くて。覚えることも専門知識ばかりなので。頭がパンクしそうでした(笑)。
勉強って、具体的にどのような?
専門用語から始まり、重量・重心管理をする上で必要な基礎知識、飛行機の特性やシステムの使い方などを座学で2週間弱勉強して・・・マニュアルが赤本並みに分厚くて気が遠くなりそうでしたが・・・(笑)。その後OJTとして先輩が先生として1人ついて、実際に便をやってみるというのを、3週間弱やって。最後に修了試験があるんですが、口頭試問が2時間。
ひえー!!
あとは筆記試験と実便を3便実際にハンドリングするというものでした。筆記試験は8割以上で合格なんです。
不合格になったら、他の配属になったのでは・・・?
どうなんでしょう。ただまたそこで負けず嫌いが出てしまったのでしょうか・・・(笑)。
脱落していった人は?
いなかったですね。
やはり、特性を見極めて、集められているんですね。
どうなんでしょう・・・(笑)。
入社後、研修期間を経て、2カ月くらいで現場デビューですか?
そうですね。6月に入るくらいに独り立ちして、実際の便をいきなり1人でやりました。
上に判断を仰いだりはしないんですか?
わたしたちの便を統括してくれている方が7人程につき1人いらっしゃるので、困った時は随時アドバイスをしていただいています。
気が休まらない仕事ですね・・・。
休まらないですね。5分間隔で便がある時間帯もあるので。多い時は1人で1日26、27便を担当します。
急に、「1人搭乗しない」となったらどうなるんですか?
特に小型機は重心位置の動きが大きくて、1人搭乗されないだけでも規定値から外れてしまいます。座席の列ごとにゾーンが決まっていて、このゾーンは前に引っ張る、後ろに引っ張るというのが飛行機毎に決まっているんです。例えば、元々重心が後方の飛行機で、前に引っ張りたいのに前のお客さまが搭乗されなかったら、規定値内に入らないので、最悪の状況を考えて、まだ搭乗されていない人数をシステムに入力して重心を見るんです。そうすると、たいてい規定範囲から外れてしまいます。そのような時は先ほども言いましたが、規定範囲内にもっていくためにバラストという重しを積みます。今は何キロ規定範囲からオーバーしているから何枚積めば入るかというのを計算して、早い段階で発地空港の方と連絡を取って、バラスト搭載の指示を出します。定時で飛行機を出すためにも出発の数十分前から飛行機の重量とバランスが規定値・規定範囲内におさまっているかの確認を1便1便しています。
それは、グランドスタッフの方が、「○○様~」って走り回りますよね。裏でそんな調整が行われているなんて知らなくて、「時間までに乗ればいい」と思っていました・・・。
なるべく、余裕をもってチェックインと搭乗をしていただけるとありがたいです・・・。
早発?
出発予定時刻より早くブロックアウトする(=駐機場を離れる)ことです。5分位早く出た時、「素晴らしい・・・」と感じます。
乗っている人も、嬉しいですよね。
そうなんですよね。何よりお客さまのためになるので。自分でも「よし!」って思います。いろんな方々が協力してくださっての早発ですが、そこに少しでも貢献できたかな、っていうのが、すごく嬉しいんです。
将来的に、どんな風に社会人としてやっていきたいですか?
何一つ分からないところから始まって苦戦しながら様々な知識を吸収して、言ってみれば専門職のような業務だなと感じています。入社から1年、まだまだ未熟なところがあるので、今はまずこの仕事を卒なくできるようになりたいなと思います。あとは、10月から数人ずつ新入社員が入ってきていましたが、2017年の4月にはさらに後輩が増えたので、自分が新人だった頃のことを思い出して、先輩として優しくサポートしたいなと思います。
せっかくマスターしたので、すぐに手放すにはちょっともったいない知識ですもんね。
そうなんですよね。苦労して得た知識なので・・・。入社して1年経っても新たな挑戦や勉強はまだまだありますが、自分の成長のためなので頑張ります!
そういえば、齋藤さんと同じ学年に、JALのCA1人、ANAのCA3人いるんですよ。
へえ~!それは、知らなかったです。いつか、仕事の中で会えたら嬉しいですね。
藤を志望している小学生に、メッセージをお願いします。
楽しい6年間を過ごせます。わたしは藤の温かな環境で、勉強に習い事に忙しい毎日でもストレスなく通うことができました。女子しかいないので、行事の時は周りを気にせずワイワイと楽しく、個性的で優しい先生方の授業も面白いので退屈せず、行事でも勉強面でも伸び伸びとした学生生活を送れます。理解ある環境なので好きな習い事も思いっきりできますよ。女子校ならではの多くの規則に最初は戸惑うかもしれませんが、社会人になったら将来必ず役立つ知識へと変わります。6年かけて礼儀作法をしっかりと教えていただけるのも藤ならではです。ぜひ藤に来て、充実した学校生活を送ってください!
撮影場所:新千歳空港
インタビュアー/新山 晃子
カメラ/中村 祐弘
編集/松永 大輔
デザイン/清水 麻美