人間、食べる事が基本。おいしく食べるということに関わりたい
手で細かい作業をする職業に憧れ、歯学部へ進学した山本さん。
大学では、努力を続けて「優秀賞」や「学長賞」を受賞。
国家試験合格後、彼女が選んだのは「小児歯科」の道でした。
山本さんの、目指す小児歯科とは…?
大学に入って、「女子校出身」を意識するのはどんな時でしたか?
言葉づかいですね。寄宿って、「行って参ります」「只今帰りました」を必ず玄関で言うんです。それって、すぐには出てこない言葉ですよね。でも、それを自然と言うことができる。そういう、日常の小さなひとつひとつが「女子校だったからかな」と、外に出てみて気づきました。
「歯科医として向いている」と思ったのはどんな時でしたか?
いろんなことが中学高校からつながっていて、藤でコツコツ勉強できたことが、大学に入っても本当に活きましたね。わたしそんなに理系科目が得意じゃなかったので、はじめは歯学部行って不安でした。でも、歯学部って暗記科目が多いんです。「それならできる」と思って、努力を続けて。5年生の時に、「優秀賞」をいただいて。
それはすごいです!
卒業の時には、「学長賞」をいただきました。
すばらしい!それでは国家試験も一度で合格?
はい、国家試験も暗記が中心で。
合格後は?
北海道大学歯学部付属病院に2年間お世話になりました。今は各科をローテーションしてから進路を決めますが、その当時は大学6年生の時、どこの大学の何科に行くと決めてからの卒業でした。
では、在学中に小児歯科を志望?
はい。大学の臨床実習で、歯科治療を見ているなかで、やはり歯科に来られる人というのは、ほとんどが、むし歯で痛くて食べられないとか、歯がなくなって入れ歯を作ってほしいという、治す治療が多いんですよね。実は私もむし歯ができてからしか、歯医者には行ったことがありませんでしたし、詰め物している歯もあります。でも、治療せず、一生自分の歯でおいしく食べ物が食べられるようになれれば、その人の人生は間違いなく充実しますし、そういう仕事がしたいなと思って。実は、両親は郷土料理の店を開いていたんです。
違う角度から、「食」に関わることに。
はい、そこに興味があって。人間、食べる事ってまず基本だから、QOLのためにも。おいしく食べるということに関わりたいなって思いました。やっぱり小さいときからの習慣や知識って大事だと思います。「痛くなってから」じゃなく、「自分の口は自分で守る」っていう子どもたちを育てたいなって。
欧米っぽいですね。
そうなんです!大学生の時に習っていたアメリカ人の英会話の先生から、「歯のクリーニングに行きたいんだけど、どこかないかな」ということを聞かれて。ちらっと歯を見せてもらうと、すごくきれいな歯なんですが、「定期的にクリーニングに行かないと気持ち悪い」って言ってました。ちょっとずぼらでのんきそうなアメリカ人の先生だったのですが(笑)、歯に対する意識の高さにびっくりしたのをおぼえています。
耳かきも欧米では病院で行いますもんね。
そう。そういうメンテナンスの価値観が全然違うなって。
わたしが小学生の時くらいからだと思うんですよね、国が「80 歳でも20 本」、といいはじめたの。
8020 運動ですね。
自分の祖父母の世代は、入れ歯が当たり前だったので。山本さんは、死ぬまで自分の歯で食事ができる子ども達を育てたいんですね。
そうです。小さいときから、むし歯でなくても歯医者に行くのが当たり前という。そうしたら歯科も嫌なところじゃなくなると思って。あと、今のお母さんたちは、周りに親や親しい人がいなかったり、情報が溢れている中、お子様の口の中についてみんな悩んで苦労されています。
気軽に、ちょっとしたことで相談に来られるような歯科医院を作りたいなと思いました。
北大のあとは、苫小牧ですか?
はい。20 年札幌に住んで、久しぶりに故郷へ。苫小牧の歯科医院で働きはじめました。
一人前の医師になって実家に帰ってきたなんて、素晴らしいですね。
(笑)、ありがとうございます。
ご夫婦で「クリニックを開こう」と思ったのはいつ頃ですか?
大学病院に残らないなら、それしか道がないんですよね。専門医を夫がとっていたので、それを目指して私も勉強して取得しました。認定証が待合室にあります。
あっ本当ですね。(認定証をみながら)…更新しなきゃいけなんですね。
5年ごとに。試験と症例報告を行います。
開業して、「予防歯科」「気軽に通える」という自分の理想は実現していますか?
少しずつですけど。はじめは手探りの状態で苦労しましたが、開業から5年たって、今は、0歳の歯の生えないうちからご相談に来てもらったり、母乳のこと、指しゃぶりのこと、食事についてだったりと、いろんな相談も増えて、毎日充実させてもらってます。
子ども達は怖がらずに診察を?
人に口をみせるというのは、子どもにとって相当不安なことですし、初めは知らない人たちに囲まれて、泣いてしまうことが多いですけど、回数重ねると、どんな子でも変わってきますね。
「小児歯科医になってよかった」と思った瞬間を教えて下さい。
歯科医院の駐車場で車から出れなかったような、「歯医者嫌い」の子が、ニコニコ入ってきてくれるようになると、やっぱり嬉しいですね。あとはずっと通ってくれてる子の成長を感じられることや、お母さんと日常会話をしながらの診察も楽しいですね。
子ども達の下校時に、病院のまえで「先生ただいま~」とか、ないんですか?
それが、理想ですよね。地域のこどもたちに、「いってらっしゃい」みたいな。
それでは最後に、藤の入学を考えている小学生に対してメッセージをお願いします。
藤のことが何にもわからなくても、不安でも大丈夫!
大丈夫、はどうしてですか?
愛情もって育ててくれる、自分のいいところを伸ばしてくれる。だめなところはだめって言ってくれる。自分の道を見つけられる学校です!
撮影場所:北栄こども歯科
インタビュアー/新山 晃子
カメラ/中村 祐弘
編集/松永 大輔
デザイン/清水 麻美