「目の前の相手の役に立つ事にやりがいを感じる」と気付く
藤への入学を志望していなかった今村さん。
友人たちとの出会いによって「楽しさ」に転じます。
一番「ハマった」という日本史を軸に大学を選択。
彼女の大学時代はどのようなものだったのでしょう…
大学について教えてください。
いろんな友達ができて、いろんなところに旅行に行って、青春でした。すごく楽しかったです。専攻は日本文化で、特に日本史の研究を。藤とのギャップは、性格や出身、バックグラウンドが本当に様々で多様性を強く感じました。人と人との関係の中で、ケンカもしました…。
生まれて初めてのケンカ?
小学校の時にはあったので、ほぼ6年ぶり。
人間関係に困ったことがなかった中高時代を経て、久しぶりに。
ちゃんとやる人たちばっかりじゃないですか、藤は。大学では、協力してくれるのが当たり前ではなくなって、同学年だったサークルの会長とバトルになるなど(笑)。「歩幅を合わせる」事がこんなに大変なのか、と思いました。でもそっちのほうが普通ですよね。あと、大学の入学式で仲良くなった4人がいて。
当日派ですね。「すりこみ」みたいな感じ?
本当だ(笑)。人を見る目があるんだと思っています(笑)。とても仲良くなって、18 歳から今日まで 10 年ずっと一緒にいる家族のような友人ですが、それこそ最初は喧嘩もしました。私がボケっとしてると「彩加決めるの遅い!」とか(笑)
藤の生徒って「私はパッと決める、あなたはゆっくり。お互いそういう人間だよね。以上」という感じですよね。
そうですね。藤の生徒は、相手と自分が違う事を丸ごと許容している感じがありましたね。年齢や性別がどうのという話じゃない。すごく自由で、貴重な感覚だなと思います。多感な時期にお互いを否定せず肯定し合いながら成長するから、自己肯定感が生まれて個性が伸びるのかも。
世の中、相手が無条件で自分を肯定してくれる事なんてほとんどないですよね。大学では、親友でも仲間でも研究室のメンバーでも、干渉したり、ぶつかり合う場面が増えました。お互いに「なんでこうなんだ」「私はこう思う」と主張しながら、関係性を構築する感覚が新鮮でしたが、社会にでるとそれが当たり前なので、大学で経験できてよかったです。4人とはもう何でも言い合いつつ育ってきたので家族のような。むしろ家族以上に一緒にいます。
大学生活で一番頑張ったことはなんですか?
教職と塾講師のアルバイトです。通常一部(昼)と二部(夜間)のいずれかを選ぶのですが、教員免許を取りたい場合、どちらの授業も取らなきゃいけないんです。昼も夜も学校にいました。学校では教育実習系の授業が一番楽しかったですね。
やっぱり、人が好きなんですね。
はい。それに、人に何かを伝えたり教えたりする事がとても好きなんです。模擬授業は特に楽しかったですね。授業の構成の組み立てや、進め方のペースとか、話し方、動き等、どうしたらみんな目をそらさないで聞いてもらえるのかと工夫をし。さらに就職後の職種は法人営業だったので毎日 5 ~ 10 件ほどアポをとってプレゼンの嵐だったんですよ。パワポでプレゼン資料を作り、日々プレゼンに次ぐプレゼン。そこでもどれだけクライアントを飽きさせずに、私の話を一言一句多く印象に残してもらえるかに命を懸けた日々でしたが、その上で教職課程の学びは活きました。
今村さんは、色々な人と交流したいとおっしゃっていましたが、一対一だけじゃなく、不特定多数に対して話すのも好きなんですね。
とても好きですし、燃えます。
塾講師の話もきかせてください。
それこそ、新山先生に日本史を開花させてもらった事がきっかけで、それを強みに大学の4年間は学習塾でアルバイトをしました。塾生には複雑な家庭環境の生徒も多く、当時は生徒から「学校や家に居場所がないと感じる」と悩みを聞く事も多かったんです。でも「塾は楽しいから来たい」といってくれる。こちら側もやる気にならないわけがないですよね(笑)。有名なチェーンの塾でしたが、塾長はじめ講師陣も熱心で、当時私が在籍していた教室だけで生徒も 200 人程いるマンモス教室でした。私たち講師は、「まずは生徒が楽しく塾に来る」ベースを作り、生活面で落ち着いたら「目標を定めて高校へ合格させる」というのがミッションでした。
学習以外のサポートも行ったんですね。
まずは勉強よりも、生徒の悩みを聞くというところからスタートでした。一段階目ではどうしたら居場所を見出して、自己肯定感を持たせてあげられるのか。そのために真摯に話を聞きました。二段階目では生徒が最終的にどうなりたいか、将来なにをやりたいのかという話から目標を定め、目標達成のため計画を組み、合格までをやる気面でも勉強面でも伴走するといった形。生徒によってそれぞれ抱えている現状や悩み、目標とそれに対しての課題も全く異なるんですよね。それを一緒に解決していく、というのがやりがいであり、楽しかったです。楽しすぎて気づけば4年間経っていました。
途中で講師をやめれば、伴走している子を見捨てることにもなるしね。
はい、それが一番いやでした。ちなみに5教科教えていたんですけど、やっぱりとりわけ日本史は頼ってもらいました。受験の追い込みの時期には塾長から「ちょっと補習やって」と任せてもらったり、最後の1点でも多くとってもらうために新山式ノート(見開きのノートに一時代を収める)も作成して配布したり(笑)。そこでこう…生徒から「先生がいたおかげ」と言ってもらえることが嬉しかったです。そこで自分は「目の前の相手の役に立つ事にやりがいを感じる」と気付き、その軸をぶらさず就職活動をしました。
塾で教えるという経験から、自分の将来像も確立したのですね。大学のサークルの話も聞きたいのですが、たしかそこで藤の先輩に出会ったんですよね?
大湊光寿々さんのことですね。光寿々さんは、サークルの先輩じゃなかったんです。
あ、そうなんですか。
私がお世話になったサークルの会長と同じ学年に光寿々さんもいらっしゃったのと、私の大親友のバイト先の先輩で、便乗してお近づきになりました(笑)。
親友から「すごく素敵で完璧な先輩がいる!」という話を聞き、よくよく聞いてみると光寿々さんで驚きました。「あぁ、藤波会の!」って。今ではたまにお宅に遊びに行かせてもらいます。光寿々さんは本当に完璧です…。
なにが完璧だったのでしょう。
凛としていて品があり、しっかりしていて優しい。正しいと思う事は正しい、悪いものは悪い、と突き詰めてるような方です。
以前、光寿々さんのご友人でありサークルの先輩である方とお会いしたのですが「光寿々って似合ってない服とか指摘してくれる。『今日の服装それであってるの?』とか言われるんだけど(笑)」って(笑)。とても憧れますね。明るくてしなやかですが強くて男前です。でも藤女子の人は、みんなある意味男前が多いです。
そうだね。ユニセックスですよね。「女子」として生きてないから。
私は「大学に行って恋愛をするぞ!」と意気込んでいたのに、いざ出会う男性には「柏(旧姓)は男にしか見えない」と言われました。
「人間」として生きているから。
恐らく、通常であれば「女子らしさ、男子らしさ」を育んでいく 12 歳から 18 歳までの期間を、自らのアイデンティティを育む事に注力するから「個」としてユニークになるのではないかなと。全員おなじ人間でしょ?という感じですよね、皆。なので大学では男性とも全員と友達になってしまいました。
でも、すてきな伴侶に出会えているじゃないですか。
そうですね。大学4年の就職活動中に出会いました。今年の7月に入籍しました。わたしが何をやっても、「それはそれで君だ」と許容してくれます。メールを頻繁にしないとか(笑)、結婚しても仕事はし続けたいとか、入籍直前に会社を辞めて「学校に通いたい!」と言い出すとか。無理を言っても最後は「本当にやりたいなら、やりたいように。好きにしなよ」と。
今ウェブ関係を学んでいるんでしたね。
現在、AI や IoT が急速に普及して、ますます私たちの生活は便利になっている一方で、10 年後にはプログラマーが 60 万人足りなくなるといわれているほど人手が足りていないそうなんです。教育の現場でもプログラミングは必修化されますが、職業訓練校でも IT に関しては無償で授業が受けられるところがいくつもありました。それだけ需要がある業界ですよね。それも勉強し始めた理由の一つです。技術がしっかり身につけば、どこにいてもパソコンがあれば仕事ができるので、将来子どもが生まれるなどライフスタイルが変化したとしても、仕事を続ける事ができるのも魅力ですね。現在は北関東学院という職業訓練校でWEBデザインの6か月コースを修了したところなのですが、これからはプログラミングと、親和性の高い英語を並行して学ぶために3か月間の IT 留学に行き、そののち IT 業界に就職する予定です。
えっ、留学するんですか?
IT 企業には海外に本社や支社があったり、取引先が海外といったパターンも少なくないので、強みになると思ったんです。
在校生に対して、メッセージをお願いします。
とても恵まれた環境にいる優秀な皆さんなので、興味のある事は積極的にチャレンジして、深掘りしてほしいと思います。在学時には、当たり前に過ごしていたので有難みを実感できなかったのですが、今振り返ると、高校受験に邪魔されずに早いペースで学ぶ事ができ、さらに自分の学びたい事、やりたい事を深められる時間的余裕があったことは、とても貴重だったと思います。先日会社の同期に、各フィールドで活躍する私の藤女子の友人について話した際、「藤女子の学生ってとても才能がある子ばっかりなんだね」と言われましたが、それも皆自分の才能を伸ばすだけの時間があるからなのではと思います。あとは自ら情報を取りに行く事ですね。当時、大学受験を控えて進路相談をさせていただいた際に、担当の先生から、質問に対して求めているだけの答えが返ってこなかった印象がありました。当時のわたしはスルーしてしまいましたが、その際にもう一歩踏み出して、OG の方と会いたいとか、社会人の人に話を聞いてみたい、企業ってどうなのかとか、自分から行動を起こして情報を取りに行けばよかったなというのは後悔しています。最終的には、今がベストだと思っていますが、早いうちに社会を意識していれば、またいろんな選択肢があって、進路も違ったかもしれません。実際、社会に出てみると私はすこし平和ボケというか「ポカン」としていました( 笑)。愛されるスタンスだけ前面に出ている感じで(笑)。なので、「ハングリーに情報を取りに行く」は私からのアドバイスです。あとは、どこに行っても皆さんは伸びやかに愛されるので。そこは信じて。
撮影場所:藤女子大学
インタビュアー・ライター/新山 晃子
カメラ/中村 祐弘
編集/高橋 巧